IT担当者が建設会社の利益率を向上させる方法
目次
1. はじめに：建設業におけるIT活用の重要性
業界の課題と利益率の現状
建設業界は慢性的な人手不足、原価高騰、過剰な手作業による非効率といった課題を抱えています。特に中小建設会社では、利益率の低さが経営を圧迫しており、粗利率10％未満というケースも珍しくありません。
IT担当者の役割が変わりつつある背景
従来の「システム保守係」的な立場から、経営改善に寄与する戦略的役割へと変化しています。IT担当者は、現場と経営をつなぐ“翻訳者”であり、“推進者”として、会社全体の利益向上に貢献できるポジションへと進化しています。
2. 利益率改善に貢献するIT施策とは？
原価管理の見える化
原価管理が属人的だと、どの現場が赤字か黒字かが把握できません。**原価構造を「リアルタイムで可視化」**することが、利益率改善の出発点です。案件ごとの材料費・外注費・人工数を数値で捉えることにより、赤字の芽を早期に摘み取ることが可能になります。
業務プロセスの自動化と効率化
勤怠管理、請求書処理、交通費精算などのルーチンワークを自動化することで、管理部門の労働時間を大幅に削減できます。加えて、現場日報のスマホ入力なども、作業時間短縮と記録精度の向上につながります。
誤発注・二重作業の防止によるロス削減
資材発注の重複や、異なる部署間での二重入力は、ITによる一元管理で防ぐことができます。これにより無駄な支出を減らし、“利益を漏らさない”体制を構築できます。
3. ITツール導入の具体例と成功事例
現場管理アプリ（例：ANDPAD、KANNA等）の導入効果
現場写真、進捗、職人とのチャット、工程表管理などがアプリで一元化でき、「紙と電話でのやり取り」から脱却できます。たとえばある中小ゼネコンでは、ANDPAD導入により、月20時間以上の管理工数を削減し、粗利率が約2％改善したという実績があります。
クラウド型会計・見積ソフトの活用
Misocaやfreeeなどのクラウドツールを活用すれば、見積→受注→請求→入金確認までのフローがスムーズに連携できます。これにより請求漏れや締切ミスが激減し、キャッシュフローの安定にも貢献します。
チャットやプロジェクト管理ツールでの情報共有
SlackやChatwork、Backlogなどの導入により、メール文化からの脱却と情報の透明化が進みます。現場・設計・営業の三者が同じ情報をリアルタイムで共有でき、ミスコミュニケーションを大幅に減らせます。
4. IT担当者が社内改革を進めるためのステップ
現場との信頼関係構築
ITの提案は現場にとって「負担」になりがちです。最初は現場の困りごとを聞くことから始めることが大切です。手間を減らす提案で信頼を得ることが、IT導入の成功率を大きく左右します。
スモールスタートとPDCAの回し方
いきなり全社導入は失敗のもと。まずは1現場または1部署で小さく始めることが鉄則です。効果を数値で示し、他部署へ水平展開していくことで、現場の抵抗感を減らしつつ全社導入が進められます。
経営層を巻き込むプレゼンと効果測定
IT投資のROI（投資対効果）を明示することが、経営層の納得を得るカギです。利益率の変化や業務時間の削減数値を定期的に報告し、成果を見える化しましょう。
5. 利益率向上を実現する中長期的戦略
データドリブン経営への転換
日報、材料費、勤怠、工程など、蓄積されるデータを分析資源として活用すれば、どの工事が儲かるか、どの職人が稼げるかといった判断ができるようになります。感覚ではなくデータで判断する経営が利益率の安定化に直結します。
IT人材の育成と外部リソースの活用
社内のIT担当者だけでなく、ITに明るい若手の育成や、場合によっては外部の専門家（IT/DXコンサル等）との連携も視野に入れるべきです。内製と外注のバランスが、継続可能なDX推進のポイントです。
DXと経営戦略の一体化
IT化・DX推進は単なるツール導入ではなく、経営そのものの在り方の再構築です。経営層とIT担当が連携し、事業計画・成長戦略に組み込むことで、利益率の向上が“戦略として”達成されます。
6. まとめ：IT担当者が建設業の未来を変えるカギ
IT担当者は、建設業の未来を担う重要なプレイヤーです。単なるサポート役ではなく、利益を生み出す起点としての視点と行動が求められています。中小建設会社においても、“攻めのIT”を実践することで、確実に利益率を高めることは可能です。
一歩ずつ、しかし確実に社内の意識と体制を変えていくことが、未来の建設業における競争力を左右するのです。
